組織パターンの前提は、「信頼で結ばれた共同体」
「組織パターン」を読んだのでメモ。
本書では4種類のパターン言語が説明されており、
- プロジェクトマネジメントのためのパターン言語
- 組織の漸進的成長のためのパターン言語
- 組織のスタイルのためのパターン言語
- 人とコードのためのパターン言語
(手書きの汚い図だけど・・・) どのパターン言語も、パターン同士のつながりが有向グラフで図示されている。
信頼で結ばれた共同体
4つのパターン言語全てにおいて、矢印の始まりは必ず「信頼で結ばれた共同体」のパターンになっていて、これが組織の基盤となる一番重要なパターンだと示されている。
考えてみればそうで、よく言われる"心理的安全性"や"企業文化のデザイン"もこの「信頼で結ばれた共同体」を作るためのプラクティスみたいなもんで、このパターンを目指してどの組織も試行錯誤している。
お互いを信頼できてない組織は、自己弁護や自己評価・自尊心を満たすためのコミュニケーションが多くなったり、お互いがちゃんと働いているのかを監視するコストが増えてうまくいかなくなる。
前に読んでブログ記事にも書いた「ORIGINALS」という本で紹介されているブリッジウォーター社では、
「忠誠心より、真実を語ることや柔軟であることを優先せよ」
「批判的な意見を口に出していえないのなら、批判的意見をもつ権利はない」
と、強烈な企業文化を作ってそれを従業員に守らせており、これで「信頼で結ばれた共同体」パターンを作ってるかなぁと思った。
あと、企業文化のデザインについては、最近読んだ下記の記事がとても面白かった。
この記事の中で紹介されている、「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」という動画は、組織パターンの中で登場する「目的の統一」パターンと同種の考えだと思った。
「目的の統一」パターンでは、コミュニケーションのことを下記のように説明している。
コミュニケーションは目的の統一を実現するための手段にすぎないのだ。
よく、コミュニケーションが大事!コミュニケーションが重要!と聞くし、自分もそう思っちゃうけど、何のためにコミュニケーションをするのかという目的意識を改めさせてくれた。
「組織パターン」では他にも大量のパターンが紹介されているけれど、有向グラフの末端にありがちな各パターンをそれぞれ適用していくよりも、まずはこの大前提となる「信頼で結ばれた共同体」パターンを目指して全力を注ぐのが大事だなと改めて感じた。
今の自分に強く印象に残ったパターン
「信頼で結ばれた共同体」パターンが一番重要だとして、他にも重要だと思ったパターンはたくさんある。
その時の組織環境や心境によって各パターンへの印象は全然変わると思うけど、とりあえず"今の自分"が読んで印象的だったパターンは下記の通り。
- コンウェイの法則
- 期日までのゆとり
- 組織を細かくする
- 段階的に人を増やす
- 防火壁
- 目的の統一
- 婦長
- 賢い愚者
- 作業を均等に配分せよ
- 冷水器
- アーキテクトも実装する
- コードの所有権
長くなってきたから、またなんかパターンに紐づく経験をしたり考えが浮かんだときに文章化しよう。
まとめ
組織構造に関する改善をしたいときや、チームの中で自分や同僚のロールをいい感じに適応していきたい時に、これらのパターンを覚えておくとアイデアの種になりやすいと思った。
今までの自分は、組織構造やチーム内ロールバランスなどにあまり気をかけず、チームの結束力・学習力を高めて個人の力も高くしていけば何となくのチームビルディングはできるんじゃないかと思いがちだったけど、組織パターンを通してチームビルディングの「語彙」が増えたのは良い学習になった。
WitcherのGwent制作チームもUnityのアップデートに苦しんでいるという話
Witcher3から派生して作られたカードゲーム「Gwent」のiOS版がリリースされたので早速インストールしてプレイした。
(PS4版はある程度プレイ済み)
なかなか渋い。ハースストーンと比べて、テンポが遅いのが気になる。
Witcherファン的には、カード1枚1枚の効果からあふれるフレーバーがWitcherの世界観を感じさせてくれて楽しい。
GwentのUnity制作裏話
YoutubeのUnityチャンネルを散策していたら、たまたまGwentの製作者によるUnite Copenhagenの発表を見かけた。
Gwentは7つのプラットフォームに対応しているが、その中に「China」「iOS China」と中国向け特別対応が2つ入っているのが気になった。
また、GwentをベースにしたWitcher外伝の「Thronebreaker」 は全Assetのインポートに36時間かかると言っていた・・・。
Unity Upgradeはとにかく恐怖
自分も複数バージョンをまたぐUnityゲームを開発・運用の経験があるので、このスライドの辛さはよく分かる。
Asset Store等で入手した外部ライブラリが多くなればなるほどUpgradeでの苦労も増えるので、長期開発を見越した場合は外部ライブラリの利用もよく考えないといけない。
これに関しては「プログラマが知るべき97のこと」にも書かれていて記事にも書いた。
Build にとにかく時間かかる
ビルドに時間がかかるのはゲーム開発で悩ましい点の1つ。
先日のEOF2019のt_wadaさんの講演(質とスピード)でもあったが、スピードを上げて質も上げたいところをこのビルド時間の長さに邪魔される。
iOS向けにビルドするにはMacOSを使う必要があるので、どれだけ高スペックのMacProを用意できるかの勝負にもなりがち。
ちょっと古いけれど、Cygamesの資料でビルドマシンのスペックはケチらないことを言っていて、自分もこの資料は良い説明資料にさせてもらっている。
アセットバンドルの管理について - Speaker Deck
共通ツールはUPM(Unity Package Manager)
複数プロジェクトで共通に使うツールやライブラリは、UPM(Unity Package Manager)を用いて管理している。
今自分がいるプロジェクトでは自作ツール等をUPMで管理しておらず、git submodule を使っているが、 git submodule 管理も結構面倒でトラブル起きるのでUPMとメリデメを比較してみたい。
Authoring
莫大な量のアセットと、それに関わる多くの人々による編集、マルチプラットフォームや地域によるアセット差分、これらをうまいこと品質担保するのはめちゃくちゃ大変。
上のような自動チェックツールが無いと破綻する規模なので、当然作られている。
大規模ゲーム制作にはこういった自動ツールを用意できる技術力の積み上げ・基礎力が大切だなぁと改めて思った。
ゲームの中身をいい感じに設計・実装するスキルも必要だけど、規模が大きくなればなるほど周辺の開発環境を構築するスキルの重要性が相対的に上がってくる。
最後に採用募集のスライドがあったけれど、Automation Engineer, Pipeline Engineer, Tools Engineer などツール開発に焦点を当てたエンジニア募集をしているのが印象的だった。
自分の観測範囲だと、割と広く「Unityエンジニア募集」といった要項が多いのかなぁと思ったので。
他人のプラセボ効果を邪魔しないようにします
予想通りに不合理 に書かれていた「わたしのプラセボを奪わないでくれ!」のコラムが忘れられない。
というのも今までの自分を振り返ってみて、他人に対して野暮なことを言ったり、大人げない指摘をしていたなぁということを思い出した。
例えば、「XXが体に良いから始めてみた〜」という発言に対し、「XXは実験結果では意味ないって出てたよ」的なことを言っちゃうこと。
これはまさに本で書かれている「わたしのプラセボを奪わないでくれ!」をやらかしてしまっている。
プラセボ効果はかなり大きい
本やこちらの記事にも書かれている通り、プラセボ効果は実際に広く観測されている。
「値段が高い偽薬ほどよく効く」
「偽薬だとわかっていても効いてしまう」
などの結果から、人間への医療行為と精密機械の修理行為は全く別のものだということが分かる。
精密機械に対して偽の修理行為(今から治しま〜すとだけ言って何もしない)をして治るなんてことは全くないけれど、人間の場合は偽手術でも効果が出てしまう。
肉体的な損傷を伴う外科手術であるが、狂気の沙汰と言うべきか、偽手術で改善が見られたという報告はかなりの数に上っている。フィンランドでは、外科医が軟骨の損傷を手術するために、患者を手術室に入れた。うち半分の患者が実際に手術を受けている。他の患者は麻酔をかけられ、切開されたが、手術自体はその真似をするだけであった。それでも両グループとも改善が見られた。
もし、「高額な手術ほど効果が高い」という話があったとして、
- 効果が高いから値段が高いのか
- 値段が高いから効果が高くなるのか
は、人間の場合は判断がつかないのかもしれない。
痛いの痛いの飛んでいけ
結局のところプラセボ効果は、なんの効果も無い薬を飲んで実際に効果が出てしまうので、物理学の世界ではなく、生物学や心理学のようなまだよくわからない超複雑な世界の現象とも思える。
そこでまたこの楽しい進化心理学の話を思い出す。
高額医療サービスは確かに病気を治すが、同時にそれは精巧に作り上げられた「痛いの痛いの飛んでいけ」の大人版だということである
上の記事では別にプラセボ効果のことを言っているのではないけれど、高額医療サービスはある意味「痛いの痛いの飛んでいけ」の大人版というフレーズが面白かったので記憶に紐付けてしまった。
まとめ
プラセボ効果はかなり大きいので、なるべく自分もその恩恵には預かっていきたいし、他人のものも邪魔しないようにしたい。
ただ、先日も問題になった「血液クレンジング」のような、値段が高く万が一のリスクが大きいものはできれば避けてほしいなと思う。
でもこれも「痛いの痛いの飛んでいけ」の大人版であり、この行為に満足している人に指摘することは本人にとって良いことなのか悪いことなのかは結果として分からない。
この、行動の選択肢が勧善懲悪ではない結果をうみそうな感覚は、Witcher3のクエストで何度も味わったので、この世はダークファンタジーなんだなぁと改めて思った。
EOF2019参加してきましたレポ
10/31に開催されたEOF2019 (Engineering Organization Festival 2019) | Peatixに、会社休んで(実質趣味で)参加してきたのでレポート。
EM.FMからEOF2019へ
エンジニアリング組織論への招待はチーム読書会で2周したほど学びが多い本で、その著者の広木大地さんと、アカツキのゆのんさんが始めたPodcastがEM.FM。
そのEM.FMから派生して開催されたのがEOF2019ということで、是非とも参加させて頂いた。
(経緯などはゆのんさんの下記ブログ記事に詳しく書かれている)
1つに決められない参加セッション
タイムスケジュールを見ると、どのセッションも直接聞きたいレベルで、その中から1つ選ぶのが難しかった。
参加できなかったセッションは、Twitterでの感想やすぐさま公開された講演資料などを読んで補完できたので、便利な世の中になったなぁと思う。
以下、参加したセッションを中心に印象に残った言葉や感想をレポ。
Podcastという組織文化戦略
まずは、Podcast好きとしてこのセッションに参加。
Fukabori.fm のいわしさん、ajito.fmのすずけんさん、そしてEM.FMのゆのんさんによるパネルセッションで、普段聞けない話が聞けて良かった。
(社内)Podcastを始めたことによるメリットとして
- 透明性が上がった
- 人に興味をもつようになった
- 下調べも含めて、一番自分の勉強になる
があったとのこと。
このセッションを聴いて、今度うちのチーム内だけでもゆる〜い雰囲気でPodcastを収録してみようと思ったので、チームの誰かに相談をしてみる。
質とスピード
上のPodcastの裏セッションだったけれども、公開されたスライドを見てとても刺激的だった。
「質とスピード」の講演資料を説明不足の部分を追記しつつ公開しました #eof2019 / “質とスピード / Quality and Speed - Speaker Deck” https://t.co/a5tQhjpS1C
— Takuto Wada (@t_wada) November 1, 2019
詳しくはスライド参照で、特に心に刺さったページは
スライドの中で紹介されている「LeanとDevOpsの科学」は自分も読んだけれど印象的な本で、デプロイ頻度の多いサービスほど品質も良かったという統計データが示されており、ふわっとした直感的感覚ではなく科学的なアプローチから「質とスピード」が述べられている。
今後は「スピード優先」という言葉に対しては、このスライドを見返して「短期的/中期的/長期的」の影響を改めて考えていきたいと思う。
メルカリ、メルペイのエンジニアリング組織の変化
メルカリ
#EOF2019 本日の発表スライドです(メルカリパート) 聞いてくださった皆様、ありがとうございました。https://t.co/IOvz7YYwfa
— Hidenori Goto (@hidenorigoto) October 31, 2019
メルカリがモノリシックな構造からマイクロサービス化に舵を切った背景には、「コンウェイの法則」をベースにした組織戦略もある。
メルカリCTO名村が目指す「統率のとれた有機的な組織」とは? Developers Summit 2019 Summerレポート | mercan (メルカン)
今自分が読んでる「組織パターン」でもコンウェイの法則がガンガン出てきていて、割と中心的な戦略になっている。
登壇者の後藤さんも言ってたように、このコンウェイの法則は人間の本能的な性質を組織とアーキテクチャの関係に当てはめたものでもあるっちゃあるので、そりゃ普遍的にもなる。
講演では、マイクロサービス化したことでうまくいったことだけでなく、デメリットや課題も話してくれていてとても参考になった。
メルペイ
遅くなりましたが、 #eof2019 での発表スライドこちらにアップロードしました! https://t.co/0QrJi8OUaU pic.twitter.com/9ZgeRjZyjO
— Naoki Ishikawa (@jarinosuke) November 1, 2019
メルペイの石川さんの講演では、メルペイのEM業務範囲や目指すチーム像について説明してくれた。
メルペイでのEMのタスクは多岐に渡っていて、この図を見て改めて、エンジニアの延長線でそのままEMになれるわけではないということを感じた。
別の発表でSansanの鈴木さんが話していたように、エンジニアというポジションを一度 Unlearn して EMに挑むことが大切だと感じた。
本日、EOF2019での登壇スライドです!
— Yasunori Suzuki (@yasuzukisan) October 31, 2019
お聞きいただいた皆様、Ask the speakerにて質問いただいた皆様ありがとうございました!
筋肉質なエンジニア組織を目指して -失敗と成功から学ぶエンジニア組織の作り方-https://t.co/4iYqbLfjA3#eof2019 #room0 #33tech
メルペイの石川さんの講演資料の中で、チームで一番大事なのはHRT(謙虚, 尊敬, 信頼)と言っていて、それには同意するとともに、だがしかし「謙虚」を保つのは人間として激ムズなのでちゃんと攻略する必要あると感じている。
HRTが一番大事。HRT保つのは一番難しいと思うので、日々意識しないといけない。 #eof2019 pic.twitter.com/1Ua3xOzTkx
— kidooom (@kidooom) October 31, 2019
チャットコミュニケーションの問題と心理的安全性の課題
スッ#EOF2019https://t.co/pkSnKRAqpg
— ところてん (@tokoroten) October 31, 2019
ところてんさんのスライド資料は以前のも含めて何度も読んでいてとても参考にしている。
その最新作ということで、非常に楽しかった!
まずスライドの序盤で説明されている心理的安全性については全面的同意で、「ぬるま湯ではなく健全に殴り合うための状態」と理解している。
んで、自分も「DMやめろ」側の人間だったけれど、今回の講演を聴いて考えを改められた。
public channelに書き込むことへの抵抗感は誰しもあるし、public channel にいる人達の認知リソースの消費という側面で考えると確かにDMという選択肢も仕方ないことはある。
個人的には、「muteすればいいじゃん」とか「メンションあったときだけ意識すればいいじゃん」とか思ってたけれど、誰もがそう考えているわけではなく、人によっては発言を無視するコストもかなりかかっていると理解しないとなぁと思った。
昔からインターネットにどっぷり浸かってる人間やTwitter大好き人間からすると、slackの発言流量大したことないと思いがち・・・。
これな、4000人弱フォローしてるけど、流量足りないって思うもんhttps://t.co/g3TXXUjM9v
— ところてん (@tokoroten) November 1, 2019
まとめ
本当に素晴らしいイベントだった。運営凄い。
逆に、己の勉強不足・力不足・経験不足にも打ちのめされるイベントになった。
今後も業務でEM的なことをする機会はあるので、今回の学びを活かしていきたい。
そして、改めてEMにはピープルケアの要素が強くあると感じたので、個人的に興味が強い心理学やBiologyの側面から自分らしくアプローチしていきたいと思った。
赤の女王仮説とエンジニアの勉強継続説
進化論の本を読んでいると、「赤の女王仮説」という話題も度々出てくる。
赤の女王仮説は、進化に関する仮説の一つ。
「赤の女王」とはルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場する人物で、彼女が作中で発した「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない(It takes all the running you can do, to keep in the same place.)」という台詞から、種・個体・遺伝子が生き残るためには進化し続けなければならないことの比喩として用いられている。
ストーリーの比喩とフレーズの良さもあり、自分の記憶に強く刻まれた説なのだが、これって「エンジニアは勉強し続けないと周りについていけなくていずれ役に立たなくなる」的な話と同じだなと思った。
この効果のもっとも明白な一例は、捕食者と被食者の間の軍拡競走である(例えばVermeij, 1987)。捕食者はよりよい攻撃方法(例えば、キツネがより速く走る)を開発することで、獲物をより多く獲得できる。同時に獲物はよりよい防御方法(例えば、ウサギが敏感な耳を持つ)を開発することで、より生き残りやすくなる。生存競争に生き残るためには常に進化し続けることが必要であり、立ち止まるものは絶滅するという点で、赤の女王の台詞の通りなのである。
この「赤の女王仮説」に従うと、環境の変化が早くなればなるほど、その環境に適応しやすい者(=変化についていける者)が競争に勝ちやすくなり、変化についていけない者は競争に負ける可能性が増す。
アリスに登場する赤の女王曰く
— Go Ando / THE GUILD (@goando) June 16, 2018
「その場にとどまるためには、全力で走り続けなければならない」
世界は進み続けているので、自分が今いる場所に留まりたければ、常に進化を続けないといけない。
変化の激しい現代なら尚更。
赤の女王仮説 - Wikipediahttps://t.co/ubp64phZvn
エンジニアと勉強に関する話は度々ネット上でも話題になり、下の記事も記憶に新しい。
勉強する人としない人との差は時間が経てば経つほどに残酷なほど顕著になっていきます。その時に一番苦しむのは、プライベートでどうしても勉強したくないと言っている本人です。
組織の大多数がプライベートで勉強しない人で占められている場合にはそれでも成り立つかもしれませんね。自分がたいして成長できていなくても、同じように成長できない人達が周りにたくさんいるわけですから、それなら自分が成長できなくて悩む必要もありません。
でも周りのエンジニアの多くが技術が好きでプライベートで勝手にどんどん学んでいく人達で占められている場合には、勉強嫌いな人達は肩身の狭い思いをすることになってしまいます。
残念ながら、インターネットの普及・コンピューターの高性能化などのテクノロジーの発展により、近年の変化のスピードは激的に早くなっていて、加速が止まらない印象がある。
そんな中で、まったり趣味や娯楽に浸って楽しく生きていきたい気持ちは良く分かる。
自分もできれば好きなゲームだけやって怠惰な生活を送っていきたいなぁと思う時もある。しかし、そうやってゲームしかしない生活を送り出すと、遅かれ早かれ世界の環境変化についていけずに絶滅する可能性が出てくるため、勉強に多くの時間を割いている。 (ただ、自分は勉強するのも趣味といっていいほど好きなことのでちょうど良かった)
勉強と訓練は違うという捉え方
今この記事を書いていて、参考にググっていくつか読んだWebページの中で、下の記事が面白かった。
自身が所属する会社組織において、業務上で求められる技術(スキル)を身につけることは訓練であって、勉強ではありません。そしてこれは、会社組織に所属する者としての義務なのです。
逆に、勉強とは今は使うことはないが将来使う可能性のある技術(スキル)・知識を身につけることです。必要とされる前に実践することが勉強であり、それを業務で「今」使用しなければならなくなった時点で、それは勉強ではなくなります。
自分も、今やっていることが「勉強」なのか「訓練」なのかはほとんど意識せずにやってきた。
最近ハマっている生物学や進化心理学の学問などは直接業務に出てはこないので、「勉強」に該当する。
それに対して、Unityやプログラミング、3Dグラフィックスを学ぶことは「訓練」に該当すると思った。
もし今自分の業務における課題が「訓練不足」に起因するものであれば、まずは「訓練」をしていくことが大事だし、そうやって訓練によって業務がスムーズに進むようになれば勉強の時間も確保しやすくなる。
自分はどっちかといえば「勉強」が好きで、「訓練」は足りてないのかもしれないなと思っちゃったので、今後はそこのバランスを考えていこうと思った。
バチェラー・ジャパンシーズン3を見た
バチェラーシリーズは面白くて毎度見ていて、今日シーズン3を見終わったので感じたことをメモっておく。
※こっからネタバレあり
序盤〜中盤までの感想
バチェラー友永さんへの印象はとても良かった。
番組的に残しておいたほうが面白い人も容赦なく1話目で落とすし、「ぶっちゃけ」「正直」といったワードも多いことから、飾らない正直な態度が誠実さにも繋がって見えた。
こちらのコラムで、
友永の真剣さからは、結婚への熱意が伝わってくる。今作、最後に残った女性とバチェラーが結婚する可能性は過去作よりも高い。僕はそう観ている。
と感想が書かれているが、自分も似たような感想を持っていた。
というわけで、今回こそは!という期待は高かった。
終盤〜最後の感想
終盤になってもバチェラーの「正直さ」はずっと高いままだったが、その「正直さ」がだんだんと自分中心に感じられた。
「正直」だからバチェラーを誠実だと思っていたのに、後半は「正直さ」はそのままで、誠実さを感じなくなくなってきた。
この自分の捉え方の変化から、正直=誠実ではないんだなということが分かった。
つまり雑な4象限で図を書いてみると、中盤までは右上の「誠実ゾーン」にいることが多く見られたけれど、徐々に利己的な感情が目立つようになってきて(家族との対話のシーンが印象的)、実は左上のわがままゾーンにいることも多いんじゃないかと思えてきた。
まあこれは、最後の結末を知ってしまったがゆえの自分の後付け感情の可能性も高いけれど。
ただ、MCのさっしーや今田耕司、落とされた女性たちなど、最終エピソードを見終わった人の大半がネガティブな感想を持っていることから、総じて「社会的に良くない行動」で幕を閉めてしまったことは確かだと思う。
これは進化心理学の研究テーマでも似たようなことが論じられていて、以下のようなツイート内容を次々と思い出した。
J.ヘンリック:“ 小規模社会では、多くの共同体の例に漏れず、規範を犯した者にはさまざまな制裁が待ち受けている。まず、陰ロを叩かれたり、悪い噂を流されたりといったことから始まる。クラのときのように、特定の親類から笑いものにされることが多い。” pic.twitter.com/ILfZFL3CsC
— ORE(エボサイ) (@selfcomestomine) October 9, 2019
J.ヘンリック:“人類進化の歴史を通してずっと、規範を犯す者には制裁が加えられ、規範を守る者には報酬が与えられてきたことで、人類の自己家畜化(self-domestication)が進み、ヒトに規範心理が植えつけられたのである。この心理はいくつかの要素から成り立っている。” pic.twitter.com/gsacAS7UhQ
— ORE(エボサイ) (@selfcomestomine) October 9, 2019
今回の結末は、バチェラーという番組のルールだけは守ったものの、その後に一般常識的な男女ルールを破ってしまったので、これを観た人たちは否定的な反応を起こしてしまったんだと思う(自分もそうだ)。
ズルい奴をすぐさま見つけ出して、制裁を加えようと思う、あるいは「あいつズルをしてるよ!」とみんなに向かって訴えて処分してもらう、こういう社会的な淘汰圧のなかで人間という動物はこころを進化させてきたわけですからね… https://t.co/XXhJjdytVt
— ORE(エボサイ) (@selfcomestomine) October 16, 2019
だからと言って、「みんなが叩いてるから叩いていい」的な近年のネットでよく見られる炎上や批判は怖いので、そこに自分も乗っかっていかないように気をつけたいと思った。
(まあ人間だから、状況によって社会規範守れない時もあるよね)
よく分からないこと、気になったこと
過去シーズンも含めると、好き好きオーラを出してくる献身的な女性より、まだ好きかどうか分からないミステリアスな女性の方が男性の心を掴みやすい傾向にある。
あと、家族に反対された人ほど選ばれやすい傾向もある。
これは心理学的な側面でなんか理由が説明できるんかな?
気になったので、今後調べたいと思った。
まとめ
見終わった後に自分も感想をつぶやいたり、Twitterで検索して他の人の感想を見ずにはいられなかった。
ただ、こうやって感情が揺さぶられて同じ番組を観た人の共感を得たくなるというものは、とても面白いコンテンツなんだなと思う。
今回の結果を見るにガチな番組だと思って良さそうなので、「人間が特定環境においてどのような振る舞いをするのか?」という実験的な側面もあって自分は楽しんで観てるのかもしれない。
シーズン4も楽しみです。
ユヴァル・ノア・ハラリの世界観にハマる
「サピエンス全史上巻」を読んだ。
とても面白く、読み始めてからずっとワクワクしながら読み進められた。
最近自分の興味対象である進化心理学にも通じる話で、我々人類=ホモサピエンスの歴史を紐解いていくことで、なぜ現代社会がこのような情勢になり、どのような考え方に根付いているのか、未来にどうなっていくかを考えていくストーリーになっている。
しかも本人による解説動画がYoutubeに上がっていて、無料で全部見れる!
動画の7つ目ぐらいまで見たが、サピエンス全史に沿ってかなり詳しく説明してくれていて、本の内容の復習になって良い感じ。
ハラリ氏の英語もとても分かりやすく、英語多読の一貫にもなるので助かる。
虚構が協力を可能にした
このTED動画で分かりやすく説明されている。
ホモサピエンスが今地球を支配できるほどの力を持てるようになったのは、7万年前にホモサピエンスに起きた「認知革命」によるものだと考えられている。
認知革命によって言語を用いた効率的な社会的やり取りが日常的に行われ、そこから聖書や神話、近代国家の国民主義のような共通の虚構を作り出すことで、大人数の見知らぬ人間同士が協力できる社会を作れるようになった。
この虚構には、「法人」「貨幣」「法律」なども含まれており、自分たちが今当たり前の普遍ルールだと思っている概念は、ホモサピエンスたちが協力を可能にするために作られた共通の神話だと改めて気付かされた。
本来、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限は、ダンバー数と呼ばれ、約150人だと言われている。
しかし現代社会では、150人をゆうに超える集団で社会関係を維持する必要があり、その維持のために共通の神話=虚構がフルに活躍していることが実感できる。
TEDの動画の中でも下記のように言っている。
どうやって協働しているのか、ほかの動物にはできないような協働を 可能にするのは何か? 答えはズバリ 想像力です。人間は 無数の知らない人たちとも 柔軟性をもって協働することができます。それはこの地球上で人間だけが唯一 想像したり架空の物語を作り それを信じることができるからです。全員が 同じフィクションを信じれば 同じルールや基準や価値観に従って 全員が行動します。
またサピエンス全史上巻およびTED動画の中でハラリ氏は、「貨幣」が最も成功した最強の虚構ルールだと言っている。
確かに、お金は今の人間の根源的な興味関心事に食い込んでいる概念になっているなと同感。
実際のところ お金は 人間が考案し 受け継がれてきたものの中で もっとも成功した例です。 全ての人が信じる唯一のストーリーだからです。 全員が神を信じているわけではありません。 全員が人権を信じているわけではありません。 全員が国家主義というわけではありません。 ところが お金やドルは 全員が信じるところとなっています。 オサマ・ビン・ラディンでさえもです。 彼は アメリカの政治と宗教と文化を 憎んでいましたが アメリカ・ドルに たてつくことはありませんでした。 実際のところ 相当好きだったと思います。
虚構のルールは、ルール作成者が有利になるようになりやすく、そのルールに従順に従って家畜化しないように気をつけていきたいと思えた。
TED動画では以下のように締めくくっている。
つまりは 人間は 二重の現実にいるので 世界をコントロールしているんです。 他の全ての動物は 客観的実在の世界だけに生きています。 彼らの現実は 実在的に存在するもので構成されています。 川や木やライオンや象のような 実在です。 我々人間も 実在の世界に生きています。 川や木もあれば ライオンも象もいます。 しかし 何世紀にもわたって この実在の世界に加えて フィクションの世界という もうひとつの層を形成していったのです。 虚構の世界です。 国家 神 お金 法人のようなものです。 そして 驚くべきことに 歴史の過程で この架空の現実が よりパワーをもつようになり 今日の世界では この架空の存在が もっとも力を有しています。
農耕がもたらした繁栄と悲劇
サピエンス全史上巻で自分にとってなかなか刺激的な章だったのが、約1万年前に人類に起きた「農業革命」に関する章だった。
農業革命は人類に定常的な食料確保をもたらした大躍進だと自分も思っていたが、著者は逆のことをサピエンス全史で述べている。
農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ
というのも、農業革命によってもたらされたものは「食料の増加」だが、これはより良い食生活やより長い余暇には結びつかなかった。
人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながり、平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民より苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。
むしろ農業革命は「小麦」にとっての大成功で、ホモサピエンスはこの小麦の栽培に朝から夜まで世話を焼いて過ごすようになった。
人口爆発などによる遺伝子の総数が増えることと、各個体が幸せになれるかどうかは必ずしも比例していないのがこの世界の難しいところ。
例えば、牛や豚、鶏などは我々人類によって家畜化されたことによってその個体数は大成功と言えるレベルで増えたものの、家畜化された各個体の幸福度を想像すると、おそらく残酷なほど苦しい生涯をおくることになる。
サピエンスの集合的な力の劇的な増加と、表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっていたことを、私達は今後の章で繰り返し目にすることになるだろう
テクノロジーの発達により今の人類が史上最大豊かになっていると思われるが、その反面、自殺者や鬱になる人が増加していることは、そういうことなのかもしれないと思った。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著作物とYoutube動画をまだまだ掘っていこう。めちゃくちゃ面白い。