ユヴァル・ノア・ハラリの世界観にハマる
「サピエンス全史上巻」を読んだ。
とても面白く、読み始めてからずっとワクワクしながら読み進められた。
最近自分の興味対象である進化心理学にも通じる話で、我々人類=ホモサピエンスの歴史を紐解いていくことで、なぜ現代社会がこのような情勢になり、どのような考え方に根付いているのか、未来にどうなっていくかを考えていくストーリーになっている。
しかも本人による解説動画がYoutubeに上がっていて、無料で全部見れる!
動画の7つ目ぐらいまで見たが、サピエンス全史に沿ってかなり詳しく説明してくれていて、本の内容の復習になって良い感じ。
ハラリ氏の英語もとても分かりやすく、英語多読の一貫にもなるので助かる。
虚構が協力を可能にした
このTED動画で分かりやすく説明されている。
ホモサピエンスが今地球を支配できるほどの力を持てるようになったのは、7万年前にホモサピエンスに起きた「認知革命」によるものだと考えられている。
認知革命によって言語を用いた効率的な社会的やり取りが日常的に行われ、そこから聖書や神話、近代国家の国民主義のような共通の虚構を作り出すことで、大人数の見知らぬ人間同士が協力できる社会を作れるようになった。
この虚構には、「法人」「貨幣」「法律」なども含まれており、自分たちが今当たり前の普遍ルールだと思っている概念は、ホモサピエンスたちが協力を可能にするために作られた共通の神話だと改めて気付かされた。
本来、人間が安定的な社会関係を維持できるとされる人数の認知的な上限は、ダンバー数と呼ばれ、約150人だと言われている。
しかし現代社会では、150人をゆうに超える集団で社会関係を維持する必要があり、その維持のために共通の神話=虚構がフルに活躍していることが実感できる。
TEDの動画の中でも下記のように言っている。
どうやって協働しているのか、ほかの動物にはできないような協働を 可能にするのは何か? 答えはズバリ 想像力です。人間は 無数の知らない人たちとも 柔軟性をもって協働することができます。それはこの地球上で人間だけが唯一 想像したり架空の物語を作り それを信じることができるからです。全員が 同じフィクションを信じれば 同じルールや基準や価値観に従って 全員が行動します。
またサピエンス全史上巻およびTED動画の中でハラリ氏は、「貨幣」が最も成功した最強の虚構ルールだと言っている。
確かに、お金は今の人間の根源的な興味関心事に食い込んでいる概念になっているなと同感。
実際のところ お金は 人間が考案し 受け継がれてきたものの中で もっとも成功した例です。 全ての人が信じる唯一のストーリーだからです。 全員が神を信じているわけではありません。 全員が人権を信じているわけではありません。 全員が国家主義というわけではありません。 ところが お金やドルは 全員が信じるところとなっています。 オサマ・ビン・ラディンでさえもです。 彼は アメリカの政治と宗教と文化を 憎んでいましたが アメリカ・ドルに たてつくことはありませんでした。 実際のところ 相当好きだったと思います。
虚構のルールは、ルール作成者が有利になるようになりやすく、そのルールに従順に従って家畜化しないように気をつけていきたいと思えた。
TED動画では以下のように締めくくっている。
つまりは 人間は 二重の現実にいるので 世界をコントロールしているんです。 他の全ての動物は 客観的実在の世界だけに生きています。 彼らの現実は 実在的に存在するもので構成されています。 川や木やライオンや象のような 実在です。 我々人間も 実在の世界に生きています。 川や木もあれば ライオンも象もいます。 しかし 何世紀にもわたって この実在の世界に加えて フィクションの世界という もうひとつの層を形成していったのです。 虚構の世界です。 国家 神 お金 法人のようなものです。 そして 驚くべきことに 歴史の過程で この架空の現実が よりパワーをもつようになり 今日の世界では この架空の存在が もっとも力を有しています。
農耕がもたらした繁栄と悲劇
サピエンス全史上巻で自分にとってなかなか刺激的な章だったのが、約1万年前に人類に起きた「農業革命」に関する章だった。
農業革命は人類に定常的な食料確保をもたらした大躍進だと自分も思っていたが、著者は逆のことをサピエンス全史で述べている。
農業革命は、史上最大の詐欺だったのだ
というのも、農業革命によってもたらされたものは「食料の増加」だが、これはより良い食生活やより長い余暇には結びつかなかった。
人口爆発と飽食のエリート層の誕生につながり、平均的な農耕民は、平均的な狩猟採集民より苦労して働いたのに、見返りに得られる食べ物は劣っていた。
むしろ農業革命は「小麦」にとっての大成功で、ホモサピエンスはこの小麦の栽培に朝から夜まで世話を焼いて過ごすようになった。
人口爆発などによる遺伝子の総数が増えることと、各個体が幸せになれるかどうかは必ずしも比例していないのがこの世界の難しいところ。
例えば、牛や豚、鶏などは我々人類によって家畜化されたことによってその個体数は大成功と言えるレベルで増えたものの、家畜化された各個体の幸福度を想像すると、おそらく残酷なほど苦しい生涯をおくることになる。
サピエンスの集合的な力の劇的な増加と、表向きの成功が、個体の多大な苦しみと密接につながっていたことを、私達は今後の章で繰り返し目にすることになるだろう
テクノロジーの発達により今の人類が史上最大豊かになっていると思われるが、その反面、自殺者や鬱になる人が増加していることは、そういうことなのかもしれないと思った。
ユヴァル・ノア・ハラリ氏の著作物とYoutube動画をまだまだ掘っていこう。めちゃくちゃ面白い。