CEDEC2019の心理的安全性の講演資料がとても良かった
今年はUnite2019に参加することを優先したためCEDEC2019には参加できなかったけれど、公開された資料を見て学んでいく。
自分もチーム開発で大事にしている「心理的安全性」をテーマにした講演が3つあったのが印象的だった。
そのうちの2つが、特に感じることがあったので、メモっておく。
「言える化」の重要性と攻撃力
では,心理的安全性を高めるにはどうすればいいかというと,「言える化」の推進が必要だという。言える化は「思い込みを取り除き,気軽に発言できる。不確かなことでも発言できる」「新入社員やベテランの区別なく相談ができ,助けを求められる」「問題や間違いを互いに指摘しあえる」といった3段階からなっており,これを進めることが心理的安全性の高さにつながっていく。
「言える化」の推進には同意で、自分もできるだけ「忖度無し・空気を読まずに意見を言う」を心がけるようにしている。
ただ、それ以上に気をつけないといけないと思っているのは、「言える化」は「言いたい放題に言われる化」でもあるということ。
チームが「言える化」に賛同して率直なフィードバックや批判が飛び交うようになると、自分自身に対してある程度批判的な意見が飛んでくることになる。
また、他人を見下して自尊心を高めようとする人や、キツイ指摘・言葉の使い方を改めようとしない人たちが「心理的安全性の言える化を実施してるんです」と隠れ蓑にする可能性もありうる。
「言える化」はゲームでいうところの「攻撃力超アップ」に近いと思っていて、それだけ達成してしまうと、高まった攻撃力によってチーム内で同士討ちが起きる恐れがある。
そのため、「防御力」を高めることがまず大事だと自分は考えていて、その方法についてもう1つの心理的安全性に関する講演で説明していた。
心理的安全性を高め「気づき」を尊重する生産性の高いチームを目指して
心理的安全性を高め「気づき」を尊重する生産性の高いチームを目指して ~ティール組織・マインドフルネスのチームへの導入の試み~
チームの心理的安全性パラメータを観測する
まず、こちらの資料で良いなぁと思った点は、メンバーのHPや攻撃力、防御力などの本来見えないパラメータをwevoxを使って観測しようとしているところ(もちろんこれで全て分かるはずはないけれど、それでも感覚・印象値だけのゼロ観測よりは指標になる)。
「エンジニアリング組織論への招待」でも以下の記述がある通り、そもそも観測できてないものは改善しようとしても変わったかどうかが分からないから改善しようにもない。
観測できるもの/できないもの
このとき重要なのは、本来コントロールできないはずのものをあなたの行動で変化させようと試みるときには、その対象が「観察できる」必要があるということです。なぜなら、「観察できない」ものは、どんなに行動したとしても変わったのか、変わらないのかわからないからです。
広木 大地. エンジニアリング組織論への招待 ~不確実性に向き合う思考と組織のリファクタリング (Japanese Edition) (Kindle の位置No.866-868). Kindle 版.
なので、「今のチームには心理的安全性が無い!」と思って改善行動に乗り出す場合は、まずwevoxなどを使って観測できるようにしたほうが良いなと思った。
メンタルの防御力を高める
講演資料の中で凄くいいなぁと思ったのが、S.I.YというGoogleで生まれたマインドフルネス研修をチームメンバーで実際に受けているところ。
マインドフルネス瞑想とかに疑わしい感想を持つ人もいるけれど、自分は自分の感覚・印象よりも観測データにもとづく科学検証結果を参考にしたいタイプなので、実際に効果がある可能性の行動は取り入れたいと思っている。
そういう意味で、上のマインドフルネス研修の中でやっているレジリエンスやセルフコンパッションは、メンタルの防御力を高め、その結果他人のアドバイスや批判を受け入れられる力がつくことが期待できる。
この、「他人のアドバイスや批判を受け入れられる力(謙虚さとも言える)」がとても重要だと思っていて、フィードバックを受け入れられてこそ自己の成長へコンバートできるようになる。
逆に、心理的安全性の高い環境に、フィードバックを受け止める準備ができてない人が入ってしまうとメンタルが病んでしまう可能性が高いんじゃないかなぁと個人的には感じている。
「言える化」を隠れ蓑にして他人を見下して自尊心を高めようとする人がいたとしても、メンタルの防御力で一旦受け入れた上で、「その指摘内容は見下してる感じがしたので良くないよ」とフィードバックを返せる関係性が大事だなぁと思う(まあそこで更に喧嘩になるかもしれないけど、そうなるような人はチームメンバーとしてどうかと・・・)。
まとめ
心理的安全性が確保されるとネガティブフィードバックが飛び交うようになり、チームの攻撃力が超アップする。
それによる同士討ちを避けるために、チームメンバー全員がそういったネガティブフィードバックを受け止める防御力を鍛えておくのが必須だと思う。 kidooom.hatenadiary.jp
ネガティブフィードバックを受け止める力は成長マインドセットだけでなく、セルフコンパッションやレジリエンスなど心理学の世界が役に立つ。
「自分は自分を褒める役割で、他人は自分の悪いところを指摘してくれる役割」はとても良い言葉だと思った。 kidooom.hatenadiary.jp
この辺を踏まえた上で、
「忠誠心より、真実を語ることや柔軟であることを優先せよ」
「批判的な意見を口に出していえないのなら、批判的意見をもつ権利はない」
といった強烈な文化が発揮できると強い組織になれると思っているので、少しずつ広めていきたい。