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「アジャイル開発とスクラム」を読んで知る、スクラム論文の偉大さ

人によって色々な定義になりがちなアジャイル開発に関して、成り立ちの経緯や採用例などを含めて易しめの内容で書かれた本で、面白く読めた。

自分は、後半の「スクラム論文再考」の章が一番印象に残った。

スクラム論文

1986年に日本人によって書かれた「新製品開発手法」の研究論文。

当初ソフトウェア開発を想定して書かれたわけではなかったが、日本人が書いたこの論文をベースにアメリカでスクラム開発手法が提唱され、それが広まって再び日本に戻ってきているというのが面白い。

スクラム論文では、新製品開発において次の6つの特徴がチームに重要だと述べている。

1. 不安定な状態を保つ

最初に綿密な計画書や指示があるわけではなく、チームは自由な裁量と同時に、困難なゴールを目指す。

2. プロジェクトチームは自ら組織化する

チームは不安定な環境から自己組織化し、対話の中で自立状態を作り出す。

アジャイル開発のスクラムでは、この「自己組織化」という言葉が結構頻繁に出る。このコンセプトはオリジナルのスクラム論文から始まっていると同時に、複雑適応系理論の応用でもあるらしい。

3. 開発フェーズを重複させる

開発フェーズを重複させることで、メンバーは専門分野を超えてプロジェクト全体に責任感を持つようになる。

アジャイル開発でも、分析、設計、実装、テストという開発のフェーズが重なりあっているし、メンバーも専門性も重複させて1つのチームとなる。

4. 「マルチ学習」

メンバーはグループ全体として学習し、さらに専門を超えて学習する。

様々な次元で「学び」が起こることを「マルチ学習」と名付けており、「多層学習」と「多能力学習」の2つを指している。

5. 柔らかなマネジメント

「無管理」でも「強い管理」でもなく、自主性を尊重した「柔らかなマネジメント」が重要である。

6. 学びを組織で共有する

過去の成功を組織に伝える、もしくは、意思的に捨て去る。


こう見ると、アジャイル開発が普及して最近大事にされてきているなぁと思う考え方が30年前の論文ですでに書かれている。

先人に学ぶことの大切さを感じるし、これをソフトウェア開発に紐づけてスクラムを提唱したジェフ・サザーランド氏は凄いなと改めて思う。