「進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命」を読んだ
進化医学に対して最近興味が強くなっていて、「進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命」という本を読んでみたら、非常に面白かった。
進化医学とは
進化医学とは、wikipediaに書いてある文を引用すると、
従来の医学では、おもに病気の至近要因を扱ってきた。至近要因は“What(なにが病気を起こすのか)”と“How(どのように病気になるのか)”に答えるものである。一方進化医学では、究極要因(進化的要因)まで拡張して扱う。これは、我々はなぜコレステロールを含む食事を好むのか、また、原因遺伝子はなぜ自然選択によって取り除かれなかったのかを考える。こちらは“Why(なぜ病気になるのか)”に対する答えである。
という感じで、遺伝子レベルで「なぜ病気になるのか」や、「そもそもそれって病気なの?」などにフォーカスを当てて考える。
こちらのサイトの説明が分かりやすい。
「進化医学からわかる肥満・糖尿病・寿命」の著者が書いている、下記ページも難しいけど面白いことを書いている。
多因子疾患における進化の傷跡|なぜ,ヒトは病気になるのか?-2|ヒトの病気に潜む進化の記憶を探る進化医学|実験医学online:羊土社
痛風は、プリン体から産出される尿酸値が高くなることで発症すると言われているが、尿酸のもつ抗酸化作用は紫外線に対して有効なので、進化学的には尿酸を処理する酵素を失うことは有利な選択だった。
だけど、人類の恵まれた環境によって大量のプリン体を摂取することが可能になり、遺伝子とのミスマッチが起きて痛風のようなエラーが起きてしまっている。
近年爆発的に増え続けているのが、糖尿病
本のタイトルにも書かれている通り、進化医学と肥満・糖尿病・寿命は密接に関わっている。
生き物は基本的に食料が少ない環境で適用してきたので、慢性的な食べ過ぎや運動不足というイレギュラーな現代の環境と遺伝との間にミスマッチが起きている。
日本人は白人に比べて肥満率は低いのに、糖尿病率は増え続けている
この本を読んで恐怖を感じたのはこのデータ。
日本人は白人に比べると肥満率はかなり低いのに、糖尿病にかかる割合は増え続けている。
これは、日本人は白人よりもインスリン分泌能が低いため、糖尿病にかかりやすい性質があるためといわれている。
内臓脂肪が特に危険
内蔵脂肪は皮下脂肪に比べて代謝回転が速く、より多くの脂肪酸を放出すること、放出された脂肪酸は門脈を経て肝臓に達してインスリン作用を阻害し、糖代謝の異常をきたすと言われている。
なので、日本人でお腹に脂肪がたまっている状態は、実は笑い事ではないレベルでリスクを抱えている・・・。
睡眠不足が肥満を誘発する
食欲に関するホルモンは、睡眠とも大きく関わっている。
睡眠不足になると、食欲を増進するホルモンが増え、逆に食欲をおさえるホルモンの分泌が減ることが分かっているため、過食傾向になって肥満に繋がる。
筋肉量も重要な指標
筋トレで筋肉をつけることは、ただパワーが強くなるだけなどという単純な結果ではなく、血糖値をうまく処理することにも繋がる。
逆に運動不足で筋肉量が少ないと、痩せていても糖尿病へのリスクはあるという点に気をつけないといけない。
寿命と老化
本の後半は寿命の話になっていて、ここも非常に面白く興味深い内容だった。
カロリー制限による寿命延長効果は、マウスだけでなくサルでも同様の結果が観測できた。
ということは、人間もカロリー制限によるメリットは間違いなくあると考えられる。
この寿命延長はただ単に老人期間が伸びるのではなくて、老化が遅れるという効果が期待されるので、過食に興味が無い自分はカロリー制限への意識が更に高まったのでこの本を読んで本当に良かった。
まとめ
このへんの現人類の環境と遺伝とのミスマッチについては、「最高の体調」という本にとても分かりやすく書かれているのでオススメ。
進化医学面白いので、もっと他の本も読んで学んでいこうと思う。